新宿に住む5人が定期的に童話の世界に迷い込む現象に遭遇する物語です。前衛芸術的なイラストと新宿の写真を元にした背景、音声とテキストのズレなどを生かした演出が光ります。途中でミュージカル風になったりするなど、色々実験的な要素もあります。
よく性描写と無関係な台詞の部分の企業名や人名が伏字になっているような作品があり、自由を求めてエロゲーをやったのにとげんなりすることがあるのですが、この作品はそうした委縮がなく、小説と同程度に自由な表現ができていたのも良かったです。
童話の世界と現実世界は別世界ではなく不完全にオーバーレイするような形で存在しているので、文章で描かれる状況を想像しながら読むと面白いです。シチュエーションも人間社会に触れられなくなる、ボードゲーム、水没した街を航海など、多種多様です。事態を論理的に解決という方向ではなく、抽象的な形で進行しますが、不条理な世界観と捉えどころのない物語に味があります。ノスタルジックな音楽も魅力です。
性描写はあまりエロティックではないものの、コンシューマー化などはおそらく想定していないであろう作品なので、取って付けた感じが殆どなく物語に馴染んでいます。